【本】AI(人口知能)の基本が分かる本

  • 2020年5月17日
  • 2020年7月12日

子育て中のパパ「たすく」です。

AI(人工知能)について書かれた本の紹介をします。

タイトル
『AIvs. 教科書が読めない子どもたち』

著者
新井 紀子(あらい のりこ)

出版社
東洋経済

初版発行日
2018年2月15日

ビジネス書大賞2019で大賞を受賞。

読んだきっかけ

・今後子どもに身につけさせると良い能力にどのようなものがあるか?
・最近AIの話をよく聞くけど今ひとつ分からない。

と漠然と思っていた時、本屋で平置きされていて気になって購入しました。

この本から学べたこと

こんなことを学べました。

・そもそもAI(人口知能)とは何なのかの説明
・AIの基本的な働き
・AIが今後普及してきたときの世の中の変化(著者の予測)
・読解力の大事さ

子どもの教育において、読解力を身につけさせる大事さを感じました。
子どもに限らず自分自身も高いレベルでの読解力が必要ですが。
まずは嫁さんの顔色をちゃんと窺えるようにようにならないとAI夫に取って代わられるかも(汗)。
あれっ?顔色の識別は僕よりAIの方がすでに進んでそう!?

たすく
すでにAIに負けてるかも(涙)

簡単なこの本の紹介

著者は数学者として東大に合格することを目指す「東ロボくん」という人工知能の研究をされている研究者です。

本書では東ロボを通して、AIの説明、AIができること・できないこと、AI技術が進んだ未来の労働環境の変化について書かれていました。

著者の紹介

裏面に書かれていた紹介文

新井紀子 あらい のりこ
国立情報学研究所教授、
同社会共同知研究センター長。
一般社団法人「教育のための科学研究所」
代表理事・所長

東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫性大学院数学研究科単位取得退学(ABD)。

東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。

2011年より人口知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。

2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。

主著に『ハッピーになれる算数』『生きぬくための数学入門』(イースト・プレス)、『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)などがある。

本の内容紹介

第1章 MARCHに合格―AIはライバル

第1章ではAIに対する基本的な説明が書かれています。東ロボのプロジェクトを始めた目的をこのように書かれています。

目的は「AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。
そうすれば、AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たなければならないかが自ずと明らかになるからです。」(P.20)

試験で出される文章問題を東ロボくんにどのように認識させて、どのように考えさせるかというプロセスの説明から、AIというものがどのような仕組みで動いているかという説明がありました。
模試で試したところ、首都圏の有名私立のMARCHや、関西の有名私立の関関同立に合格できるレベルになったそうです。
このことから、ホワイトカラー系の事務職の多くの仕事がなくなるとの予測を述べられています。
2010年に出版された『コンピュータが仕事を奪う』で著者はすでにそのことを述べていたそうです。

第2章 桜散る―シンギュラリティはSF

2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月で5教科8科目の東ロボくんの偏差値は57.1だったそうです(2015年の挑戦では偏差値は57.8)。

この章では東ロボくんの限界、そしてAIの限界について書かれています。
限界の例として「常識」の壁があるとされます。

例えば「冷蔵庫から缶ジュースを取り出す」という単純な行為をロボットにさせるにも、何が冷蔵庫かを認識し、冷蔵庫のドアの形状を把握し、扉を開けて、ジュースを探す、といった様々な「常識」を組み合さないといけないということです。

またコンピューターの特徴として、「意味の理解ができない」というものがあると。
コンピューターでは「確率、論理、統計」で答えを出せても、それ以外のことが表現できないというものです。
言葉で表されている記号の羅列に含まれる意味をコンピューターでは観測できないからだそうです。

人の脳が意識無意識を問わず認識していること全てを計算可能な数式に置き換えられない限り、「真の意味でのAI」や「シンギュラリティの到来」はないとのことです。

第3章 教科書が読めない―全国読解力調査

第3章では著者が実施した基礎的読解力調査の結果がまとめられています。
「AIに読解力をつけさせるための研究で積み上げ、エラーを分析してきた蓄積を用いて、人間の基礎的読解力を判定するために開発したテスト」RSTを通して調査をされています。

至った結論として「高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できてい」ないとのことです。
さらに基礎読解力と生活習慣、学習習慣、読書習慣などの読解力を育てる要因、損なう要因との関係を調べたそうですが、読解力と関係する因子は見つけられなかったそうです。
その他、現在の日本の教育現場について著者が感じていることなどが書かれています。
読解力が低いというのは問題であるが、何歳になっても読解力や論理的思考力は養えると書かれています。

第4章 最悪のシナリオ

この章ではAIに仕事が代替されていくシナリオが書かれています。
「AIにできるのは、基本的に生産効率を上げることだけで、新しいサービスを生み出したり問題を解決したりはできない」と。

人にしかできない仕事としてAIを設計する人が好待遇になりえるという話や、AIは全く新しいアイデアに基づいてベンチャー企業を起こせないということが書かれていました。

しかし、AIは勤労者の半数から仕事を奪ってしまうことが予測されています。
その結果、著者の予測として、「企業は人不足で頭を抱えているのに、社会には失業者が溢れている」という様子が書かれています。

最近は起業するハードルは低くなっていることを挙げ、新しい仕事に素早く慣れるための読解力を身につけ、世の中の困ったことを解決するビジネスを見つけ、AI大恐慌を迎えることなく生き延びていくことに期待されています。
「私たちが、人間にしかできないことを考え、実行に移していくことが、私たちが生き延びる唯一の道なのです」という言葉で締めくくっています。

最後に、今後の活動として著者の目指されていることが書かれています。
「中学1年生全員にRST無償で提供し、読解の偏りや不足を科学的に診断することで、中学卒業までに全員が教科書を読めるようにして卒業させること」と。
AIと共存できる社会をになるため、社会全体で基本的な読解力の向上をはかりたいとされています。

まとめ

本の中では数学の知識のない読者にも分かりやすいように数学の理論の説明がありました。読解力の大事さについても主張していらっしゃり、子どもに読んで理解する力、状況を正しく判断する力をつけさせる大切さを感じました。

現在、幼稚園児の子どもを育てている親として、読解力、すなわち国語力をつけさせることの大事さを強く感じました。学校の勉強にしても、理科や社会の勉強を理解するためには、まずは国語力が必要です。

本に書かれている文字を読めたとしても、その書かれている内容自体を正しく理解できる力がないと、肝心の中身が身につかないという基本的なことを改めて感じさせてもらいました。読解力をつけるためにはどうしたらいいかというのは、今後親としてしっかり考えていきたいと思います。

AIのこと、数学のこと、今後のAI技術の発展と雇用との関係など、技術や社会情勢が幅広く書かれていて、とてもおもしろく読ませて頂きました。

勉強になる本を出版して下さり著者に感謝です。

興味を持たれた方はぜひ読んでみて下さい。
たすくの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の紹介でした。

なお、この本には続編が出ています。

よければ読んでみて下さい。